[演出:福田陽平・寺内康太郎/構成:佐上佳嗣・寺内康太郎・福田陽平・西貴人/ナレーション:中村義洋/2017年8月2日発売]
- 「山道」★
- 「積載車」★★
- 「ドッキリ」★★
- 「おくりもの 後編」★★
- 「シリーズ監視カメラ 二階の和室」★★★
- 「カメラ機能」★★
- 「続・おくりもの 後編」★★★
「おくりもの」(★★★)がこのパートで完結。3巻をとおしてロジカルに要素を積みあげているため、作品の完成度は高い。これまでの長編と同様、煮えきらない終わりかたをするが、すべてが丸くおさまるよりはリアリティーがあるだろう。ただ、ここまでロジカルに攻めてきたのなら、もう少し真相に踏みこんでも良かった気がする。もしかすると、続編を予定しているのかもしれない。
このパートは、全体的に“心霊現象”の仕上がりが綺麗でクォリティーは高い。しかし、やはり必ずしも恐怖を呼びおこしていないのが惜しいところだ。こちらの目が肥えてしまっているのも理由ではあるが……。
「山道」(★)は、マウンテンバイクで山道を走行する様子を、ヘルメットに取りつれた小型カメラで撮影したもの。パート72「曲がり角」とシチュエーションが似ている。異形の動きはパート65「サバイバルゲーム」を思いおこさせる。
映像としてはとても良くできていて、仕上がりが丁寧。しかし、それが必ずしも怖さへとつながっていない。投稿者が恐怖におののいているのだから、異形には実在感が欲しかった。
「積載車」(★★)は、車に搭載されたカメラが運転手である投稿者の姿をとらえる。突然、奇怪な存在が現われるが、意表を突くタイミングで驚かされる。異形の造形も不気味だ(強いていえば、パート68「洗車機」に現われたモノに似ている)。
しかし、ビックリはするのだが、恐怖を覚えるところまではいかない。もっとそれらしい“兆し”を仕込んでおくべきだったと思う。あとから、“伏線”のようなものは語られるが、後出しでは怖くない。
「ドッキリ」(★★)は、バラエティ番組のドッキリ企画で、心霊現象をしかけて出演者を驚かそうとすると、ホンモノの異界の存在が現われてしまう。これまでありそうでなかったシチュエーションは面白い。
映像に映るのは、パート2「自主映画に映った男の影」に出現したモノにも似ている。あちらでは実態が不明だったが、本作では異界のモノの実態が垣間見える(ご丁寧に映像を加工して、わかりやすくしてくれる)。
「シリーズ監視カメラ 二階の和室」(★★★)は、とある民家にしかけられた監視カメラの映像がインターネットに流失したもの。不可思議な存在が現われるが、そのカタチと動きが独特だ。この〈霊〉とおぼしき存在のインパクトはそれほどでもないが、後日談にひねりが加えられ、あじわい深いものになっている。
「カメラ機能」(★★)は、スマートフォンの「ライブカメラ」という機能を使って撮影された映像。写真を撮ると、その前後15秒間の動画が記録される。そこに奇妙なものが映りんでいた。
往年の心霊写真ブームの際に「危険」と言われたタイプの写真が撮影されてしまう。心霊写真ブームのオマージュと見ることもでき、懐かしい味わいだ。
じつは〈刹那像〉でもあり、本来ならニセモノっぽさが漂うところだが、新しい機能で撮影されていることを考えれば、不自然さは感じない。
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