[プロデューサー:小田泰之/編集・構成・演出:Team XXX 向悠一(「ドローン探偵」)/音楽・音響効果:ボン/編集・MAスタジオ:スタジオミック/製作:アムモ98/2017年8月4日リリース]
夢の続き
出所がわからぬ映像というのは、どのような内容であっても不気味さが漂う。撮影した場所が廃墟となればなおさらだ。
出所が不明だから、撮られた意図も不明。そもそも意図などなく、人知の及ばぬ力が働いて、本作のような映像ができあがったのかもしれない。
そこに映りこむのは、案の定というべきか、おそらくこの世のモノではない存在。それが心霊の類いだとしたら、この手のビデオに慣れ親しんでいる者ならそれほど恐怖は覚えない。だが、本作は投稿者が現実の不幸に見舞われており、「よくあるパターンだね」と高をくくるわけにはいかない。そこにわずかながら恐怖を感じてしまう。
足音
本作では、じつは性質の異なる現象が2つ起こっている。ひとつは、怪奇現象としては珍しいものではない(現象に名前すらつけられている)。実際に遭遇する確率は低いものの、大騒ぎするほどではないように思われる。
問題は、もうひとつの現象だ。ひとつめの現象と関係があるのか。両者はまったく性質が異なるだけに、そこに因果関係を見出すのは難しい。因果関係がないとしたら、偶然にも2つの怪奇現象が同時に映像に撮られたことになる。
いずれにしても、撮影者には相当な危険が迫っている。そう観ている者に思わせるほど、邪悪な雰囲気を醸し出している。
ドローン探偵
本作がもたらす恐怖は、この世ならざるモノに対する感情ではなく、生きた人間に対するそれだろう。意志の疎通が図れそうもない人物には、それなりに恐怖心を覚えるが、心霊現象とはいいがたい。
ただし、本作ではたしかに合理的な説明のつかない存在も映像に記録されている。この異形が件の人物と関係あるかはわからない。わからないからこそ、両者の間に世界の拡がりを感じさせる。それはけっして近寄ってはならぬ“闇の世界”であることはまちがいない……。
水音
本作で私たちが目撃するのは、奇妙で不可思議ではあるが、ささいな怪現象だ。恐怖というより驚き、戸惑いを覚えるていどのもの。冷静に考えれば「だからなに?」と一笑に付すことすらできるだろう。
しかし、私たちはどうしても不可解な現象には理由をもとめる。「霊の仕業」でもいいから、とにかく因果関係を知りたくなってしまう。
もちろん、どうしてそんな現象が起こったのか、本作はなにもあきらかにはしてくれない。だから、自分たちで勝手になんらかの理由を想像しはじめてしまう。すると、みずからのココロに“闇”が生まれる。恐怖心はそんな人間の好奇心から始まるのかもしれない。
瞳の光景
本作は、映像そのものが恐怖をもたらすのも事実だ。映像の意味がわからなければ、その不可解さに薄ら寒いものを感じたはずだが、本作はあるていど意味がわかってしまう。わかるがゆえに、私たちのココロには、恐怖心というより哀しみ、同情心、憐れみの情がわきおこる。それらは本来なら忌むべき感情ではないはずだが、心霊現象を観て抱くものとしてはどうなのか? 剣呑な存在を呼び寄せてしまう恐れはないのだろうか……。
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