心霊・恐怖・衝撃・戦慄の映像を分析

  1. 心霊マスターテープ

〈心霊マスターテープ〉はいつものメンバーが騒ぐだけ……ではない

「どうせ、いつものメンバーがワチャワチャと騒ぐだけの作品だろ」と、たいして期待もせずに〈心霊マスターテープ〉シリーズを観はじめた。手持ち無沙汰の時間を埋められればいい。そんな軽い気持ちだった。

だが——。

引きこまれた。さすがに全話を一気に観通すわけにはいかなかったが、「手持ち無沙汰」の時間を埋めるのではなく、視聴の時間をきちんと捻出するため、予定をやりくりし時間をつくってシリーズ全作品を視聴した。「期待もせずに」観たのが吉と出た。なかなかの掘り出しモノを探りあてたようだ。

「いつものメンバーがワチャワチャと騒ぐだけ」という当初の見立てはまちがっていない。〈心霊ドキュメンタリー〉の愛好家を誘いこむ思惑も制作陣にはあっただろう。しかし、そんな安直な方法だけではこちらも最後まで観ようとは思わなかったはずだ。本シリーズには、それ以外に十分な魅力があったのだ。

それはなにか?

じつは、本シリーズで取りあつかわれる怪現象そのものは、それほど怖いものではない。映像のつくりにこだわりを感じさせるものの、〈心霊ドキュメンタリー〉に慣れしたしんでいる者が震えあがる、というシロモノではない。

注目すべきは、〈ストーリーテリング〉の巧みさだ。それぞれのエピソードごとに山場があり、最後には必ず次話への“引き”がしかけられている。1話あたり30分というネット番組の形式がうまく効いているのだ。なにかとてつもないことが起こっているわけでもないのだが、ついつい「このあとはどうなる?」と続きが気になってしまう。娯楽作品としての完成度の高さは評価に値しよう。

惜しむらくは、第1作目と『2』においては、元凶となる人物の動機が弱いこと。“被害”の大きさと“恨み”の強さがつり合っていない気がする。怪異の原因を過去の出来事に見出していく展開では、元凶とおぼしき人間の負の感情も過去のものとして霞んでしまう。

一方で、『ーEYEー』では、”現在進行形”(厳密にはちがうのだが)の恨み辛みが恐怖の源泉となって撮影者たちを翻弄する。観る側も、そして劇中の人物たちも、「恨み辛み」の理由に合点がいく。怪現象の起こる原因に心当たりのあるほうが恐怖は大きい。その法則をうまく表現しているのだ。第1・2作目の路線が早々に行き詰まることを察知して、3作目ですばやく別のテイストに切りかえた制作陣はじつに賢明だったといえよう。

この〈心霊マスターテープ〉のような予想外の逸材がふっと現われるから、〈心霊ドキュメンタリー〉の世界も、まだまだ目が離せない。

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