[プロデューサー:小田泰之/編集・構成・演出:Team XXX/音楽・音響効果:ボン/編集・MAスタジオ:スタジオミック/製作:アムモ98/2019年6月7日リリース]
〈呪われた心霊動画 XXX(トリプルエックス)〉シリーズは、この『16』をもって“百物語”を語りおえ、いったん完結する。
あらためて振りかえると、本シリーズの功績は、怪異はそれぞれが独立して発生しているのではなく、多くのケースで〈元凶〉が存在し、なんらかの〈因果〉によって引きおこされている。その真実を示したことだろう。
とはいえ、実際にどの現象がなんの〈因果〉で起こったものか確証はなく、〈元凶〉を突きとめるのは困難をきわめる。
それでも、“百物語”を観おえたいま、なんとなく想像力を働かせれば、大小さまざまな〈因果〉があり、そのなかでも深めの〈闇〉が2〜3存在している、といった印象になる。
〈闇〉は、シリーズ初期がもっとも深く、巻を重ねるにつれて浅くなっていってしまったのが惜しまれる。それだけ初期の映像のレベルが高いということでもあるのだが……。
恋人
投稿映像に記録された怪現象は、それほど恐怖を催すものではないが、シリーズを観つづけてきた者にとってなじみのある人物の名が登場し、にわかに戦慄する。とはいえ、件の名前を口にしているから〈因果〉を想像してしまうが、かといってどう関連しているかは不明。じつは投稿者の虚言ではないか、と解釈する余地も残されている。
鏡
前パートに登場した投稿者が撮った映像。その意味で両者の怪異になんらかの関連があったとおぼしい。現象そのものはそれなりに恐ろしいが、意味するところはまったくわからない。撮影した当人にとっては相当の恐怖だと思うが、傍観者であるわれわれの心が激しく震えるというほどでもない。
断末魔
心霊映像の類いは、大きく2種類に分けられる。ひとつは、この世で撮影した映像に“あの世のモノ”とおぼしき存在が映り込むケース。もうひとつは、“あの世”で撮影されたとおぼしいケースだ。本作の投稿映像は、(一部ではあるが)後者のケースと思われる。“あの世”のしくみを解明するための貴重な資料になりそうだ。
木片
本作は珍しいことに、ほかの投稿映像との〈因果〉のなさそうな現象がおさめられている。なんらかのいわくはありそうだが、背後にそれほど大きな〈闇〉の存在は感じられない。つまり、この現象を引き起こした元凶は、“この世ならざるモノ”だとしても、小物ということになる。
石を積む
見覚えのある“あの世のモノ”とおぼしき存在が登場する。そのため、なんらかの〈因果〉を見出さざるをえない。観ている側が過度に恐れる必要はないにしても、否応なしに背後に巣くう〈闇〉が透けて見えてしまうところが厄介だ。
百物語
タイトルは本シリーズの集大成を思わせる。一見すると、たしかにおなじみの要素も見受けられ、やはり他の投稿映像と〈因果〉があるとおぼしいが、意外なことに、ここにきて新たな問題が提起される。ただし、例によってなんの確証もなく、欠けたピースは観る側が憶測で補うしかない。そこは恐怖というより、むしろ虚無感をおぼえる。その虚無感こそが、本シリーズが示してきた〈闇〉の正体なのかもしれない。
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