[プロデューサー:小田泰之/編集・構成・演出:Team XXX/音楽・音響効果:ボン/編集・MAスタジオ:スタジオミック/製作:アムモ98/2018年12月7日リリース]
心霊現象の類いは、なんらかの〈因果〉があって引きおこされる、と考えられる。観る者は、映像に〈因果〉を見出そうとするが、それが正しいかどうか確かめる術はない。したがって、別々の投稿映像に〈因果〉を求めることには慎重であるべきだ。
鏡文字
八尾比丘尼を祀った祠で怪現象を撮影してしまう。場所そのものに剣呑な雰囲気が漂っているため、おかしなことが起こっても不思議ではない、と考えがちだが、はたして「八尾比丘尼」と因果関係はあるのだろうか? 見間違いとか勘違いで済ませられない現象であることはたしかだが……。もしかすると、八尾比丘尼は無関係で、投稿者のほうに超常的な異変が起こっていたのかもしれない。
スピーカーフォン
まったく説明のつけられない怪異に投稿者たちが巻きこまれている。「説明のつけられない」からこそ怪現象と呼ぶわけだが、本作の場合、きわめて大規模な異変が発生している点が特徴だ。単に異形が現われただけでなく、時空そのものが歪んでいる。時空の歪みは〈異界〉の存在を示していると仮定すると、“被害”は本作の投稿者以外にも及んでいると想像できる。さらに、時空の歪みは〈因果〉さえも歪めているのではないか、とさえ思えてくる。
名前
なるほど、怪現象ではあるが、投稿者の自室で起こった小さな出来事であり、とりたてて騒ぐほどのシロモノではないように思える。だが、あえてほかの投稿映像との〈因果〉を見出そうとすると、にわかに恐怖心がわいてくる。
雪国
やはり本作の映像は、興味深くはあるものの、大きな恐怖心を催すほどではない。しかし、前述の『名前』の映像と同様に、因果関係を探ろうとすると、とてつもない〈闇〉が広がっていることに気づく。いや、それも確証はなく、「関係ない」とやりすごすのも観る者の自由だ。一方で、そんなふうに“臭いものにフタ”をしている間に、〈闇〉が私たちの世界に侵食してくるような恐怖もおぼえてしまう。
空白の時間
本作もやはり「時空の歪み」を感じる。投稿者たちは一時的に〈異界〉 に入りこんでしまったとおぼしい。〈異界〉にはなにがあるのか? どんな存在が巣くっているのか? 本作の映像はその一端を垣間見ることができる貴重な資料といえる。だからといって観る者が安心できるわけではないのだが……。
無限リツイート
本作の映像を観ると、すべての〈因果〉がつながっていく。だが、その〈因果〉は観る者の想像によるもので、確固たる証拠が存在するわけではない。では、あえて「因果関係はない」と考えてみるとどうだろう? 本作は「怖い映像が見つかりました」というお話に矮小化できる。しかし、そうすると「では、この映像はなにを表わしているの?」と問われても、答えることはできない。逆説的に、「すべての〈因果〉がつながっていく」と解釈せざるをえなくなるのだ。次の瞬間、私たちは一連の現象が人間の手に負えるものではないことを悟る。
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