[演出:川居尚美・福田陽平/構成:福田陽平・川居尚美・新津徳也・美濃良偲/ナレーション:中村義洋/2019年1月9日発売]
- 「海辺」★★
- 「トンネル」★★
- 「見知らぬ女の子」★
- 「水面」★
- 「熱唱」★
- 「シリーズ監視カメラ 散乱」★★★
- 「積乱雲」★
- 「続・縁恨」★★★
『80』は前巻よりも盛りかえしたとはいえ、シリーズ低迷期を印象づける仕上がりとなってしまっている。川居&福田コンビの演出作は本巻で最後となり、じつにさびしい幕切れとなってしまった。近い将来、パワーアップして復活されることを願いたい。
前巻からつづく長編取材モノ「続・怨恨」(★★★)は、設定や物語が作りこまれ、その創作姿勢に好感は持てる。しかし、それが必ずしも恐怖へとつながっていない。話が理屈っぽくなるのはやむ得ないとしても、肝心の投稿映像があまり怖くないのだ。一部「おや?」と思わせる部分はあるが、過去作「肝試し」あたりの二番煎じのようにも思え、あまり驚きがない。
また、本筋ではないが(前巻のレビューにも書いたとおり)、登場人物の名前は仮名のはずなのに、映像ではその名前を連呼している(どうやら姓が本名で名が仮名らしい)。「仮名にしています」とわざわざテロップで強調されることもあり、細かい部分だが、どうしても気になってしまう。
「海辺」(★★)は、海辺で撮影していると奇妙なモノが映りこんでしまう。「ただの錯覚。そう見えるだけでは?」とも思えるが、それはそれで興味深い映像にはなっているので、それなりに評価できる。
「トンネル」(★★)は、心霊スポットのトンネルで怪異を撮影してしまう。事象はいくつか記録されているようだが、最初のモノは見逃してしまった。ただ、もともとリプレイで初めてわかるように仕掛けられている気もする。また、投稿者たちのやりとりが冗長ぎみで、いたずらに時間が長くなっているのが難点。こういうのは短くスパッと仕上げるほうが効果的だと思うのだが。
「見知らぬ女の子」(★)は、投稿者の幼少時代に撮られた映像に不審な女の子が映りこんでいるという。「不審」とする根拠は投稿者の証言しかなく、とくに奇妙な映像とも思えない。そのあいまいなところが制作者の意図であることは理解できるのだが。
「水面」(★)は、ボートを漕ごながら撮影した映像に異形のモノが現われる。異形の造形はそこそこ不気味だが、出現のしかたがありきたり(典型的な〈出現域制御〉)なのが惜しい。
「熱唱」(★)は、カラオケで歌う様子を撮影していると、不気味な人物が映りこむ。やはり現われるモノが不気味なのはよいが、初見では見つけづらい。ひとむかし前なら「だからこそ本物っぽい」とも思えたのだが。
「シリーズ監視カメラ 散乱」(★★★)は、コンビニに設置された監視カメラがこの世ならざるモノをとらえる。「店内で起こる奇妙な現象は幽霊のしわざだった」というありふれたお話にひとひねり加えてあり、興味深い作品になっている。欲をいえば、幽霊の消えかたにもう一工夫ほしい(いわくを元にすれば、体が吹っ飛んで消える、とか)。
「積乱雲」(★)は、珍しい雲の様子を撮った映像に怪異が記録される。「積乱雲」というタイトルだからそちらになにか起こるのだろうと思っていると見逃してしまう。現象そのものは過去作(「深夜の路上」)のクォリティを上げたバージョンといった趣。本題の怪奇現象より「積乱雲」のほうが興味深い。
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