[演出:川居尚美・福田陽平/構成:福田陽平・西貴人・川居尚美・今野恭成・沖田光/ナレーション:中村義洋/2018年4月4日発売]
- 「インディアン水車」★★
- 「孤独死」★★
- 「雪道」★★
- 「誰がために 前編」★★★★
- 「シリーズ監視カメラ 彷徨う」★★
- 「温泉旅行」★★
- 「料理」★★
- 「誰がために 後編」★★★★
パート76に収録された作品は、初見では怪異を見つけられないものが多い。ただ、本パートのメインとなる『誰がために』(★★★★)では、意図的に「初見ではわからない」映像を見せ(わかる人もいるかもしれないが)、のちの検証で怪異を明らかにしていく。そんな変則的な展開になっている。ともすれば「これってほんとに心霊現象?」と疑問にも思ってしまうのだが、取材で怪異の背景が補完されるので、妙に説得力があるのだ。
途中、既視感のある展開となるが(『Special』に収録の「続・タイムカプセル」)、最終的にはなかなか珍しいテーマへとつながっていく。全体的に恐怖度はそれほど高くはないものの、観終わったあとの“読後感”は良い意味で後味の悪いエピソードになっている。
また、川居さんが演出へ昇格している点にも注目したい。
「インディアン水車」(★★)は、サケを捕獲する特殊な装置を見学しているときに撮られた映像。「たぶんこのあたりに出てくるのでは?」と思いながら観ていたが、なぜか見逃してしまった。リプレイ映像を見ると、異形はけっこう不気味なカタチをしている。
「孤独死」(★★)は、部屋で飲み会を開いているときに撮影されたもの。現われるモノに実在感があって良いが、だとすると幽霊の類いではなく、実際に人がいたとも考えられる。いわくも理屈めいているのがマイナスだ。
「雪道」(★★)は、職場の同僚を車で送っていったときに撮った映像。やはり異形の造形にはこだわりを感じられるが、初見では見つけられなかった。「なぜそんな場所に?」という疑問も残る。
「シリーズ監視カメラ 彷徨う」(★★)は、劇団の稽古風景をとらえたもの。芝居の演出に合わせるように異界のモノが出現するのは不自然だ。〈刹那像〉の問題もある。
「温泉旅行」(★★)は、恋人同士で海辺の旅館に泊まったときに起こった怪異。あの世のモノとおぼしき存在が、けっこう予想外の出現のしかたをする。本題とははずれるが、映像でふたりがケンカしている様子がとらえられているが、その理由がわからないのは気になった。
「料理」(★★)は、料理の手順をウェブカメラで撮影したもの。なにか異変が起こったことは初見でもつかめるが、なにが現われたのかはリプレイとナレーションではじめてわかる。やはりいわくが理屈めいているのが興をそいでしまう。出現したモノは、ホラーゲーム好きなら『サイレントヒル4 ザ・ルーム』を思いうかべるかもしれない。
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