[監修:鬼塚リュウジン/音楽・音響効果:荒井佑/2018年3月2日リリース]
- 「音鳴り」◆◆◆◆
- 「曰く付き」◆◆◆◆
- 「メリーさん」◆◆◆◆
- 「呪われた地下アイドル」◆◆◆
『33』は、最近の“エンタメ路線”とはうって変わり、真面目に心霊現象を見せていく手堅いつくりになっている。シリーズの原点回帰といった趣だ。いずれの作品も構成が緻密に練りあげられ、長尺の映像でも飽きがこない。完成度の高い作品がそろっているといえる。
ただ、贅沢な悩みであることを承知したうえで、シリーズのファンとしてあえて文句をつけるなら、優等生すぎる嫌いがないでもない。100点満点をめざしながら結果的に80点の及第点を取ったという感じ。ほかの心霊・投稿ビデオシリーズならそれでもよいのだが、200点を得ようと実験的・意欲的な表現にもチャレンジし、結果70点の出来映えになっていた、というのが本シリーズの持ち味だったはず。だから、観る側はやや困惑してしまうのだ。
「音鳴り」は、〈霊〉とおぼしき存在にしっかりと実在感があるのがいい。これによって臨場感が高まっている。最後は、投稿者が部屋にもどったとき、〈女〉が〈行為〉を手伝っている、といった展開でもよかったかも。
「曰く付き」は、登場する女性のふるまいが撒き餌となって、絶妙に恐怖をあおっていく。ただ、異形はそこそこ不気味だが、その造形には既視感がある。手や足も曲がっていたほうがオリジナリティーが出そうだし、より怖かったのでは?
「メリーさん」は、「メリーさん」という有名な怪談が絶妙にアレンジされ、緊迫感あふれる一編に仕上がっている。ただ、卒なくまとまってしまっている観もある。ラストは〈それ〉がいつの間にか運転席におり、車が走りだしてしまう、などといったナンセンスさがあっても面白かっただろう。
「呪われた地下アイドル」は、偶然にとらえてしまったショッキングな事件の一部始終で、ほかの3編とは毛色が異なる。ややネタバレだが、心霊現象ではない。やはりシリーズ初期にあったようなテイストで楽しめるが、登場人物のいずれかがじつは“この世のモノ”ではなかった、といったオチもアリだったかと思う。
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