[監修:鬼塚リュウジン/音楽・音響効果:荒井佑/2021年4月28日リリース]
- 「黒髪の同居人」◆◆◆
- 「おいかけっこ」◆◆◆
- 「縫い付ける女」◆◆◆
- 「心霊処理場」◆◆◆
『52』は全体的にオーソドックスなつくりをめざしているように感じる。奇をてらわず、真摯に怪現象に向き合っている印象だ。ともすれば地味な仕上がりになりそうだが、そこに『封印映像』らしい“調味料”を加えることで、本シリーズらしさを確保している。総じて、安定感のある作品がそろっているといえよう。
「黒髪の同居人」(◆◆◆)は、ドキュメンタリー番組のものとおぼしき映像に奇妙な現象が記録される。本エピソードのポイントは、異界のモノらしき存在に実在感があること。「撮影者は確実にそれを体験したのだ」と、映像に高い説得力が生まれている。そのため観ている側は、数々の現象に〈もっともらしさ〉を感じとることができる。締めくくりは理屈めいていて恐怖感を削いでいるものの、まあ十分に許容範囲だろう。
「おいかけっこ」(◆◆◆)は、心霊スポットである地下通路で恐るべき体験をする。このエピソードも「実在感」に注目したい。あの世のモノとおぼしき存在と撮影者は会話を交わし、手で相手に触れもする。「そのときそれは確実に存在していた」という確固たる証拠が映像に残されているわけだ。撮影者の戦慄が映像を観る者にも伝わってくる。やややりすぎの観も否めないが、これは本シリーズの持ち味ともいえる。
「縫い付ける女」(◆◆◆)は、クレーマーの女の住む家で投稿者が驚愕の光景を目の当たりにする。タイトルからして剣呑な雰囲気が漂うエピソード。心霊の怖さよりも生きた人間の精神にスポットをあてる。実際に起こりそうな、ほどよいリアリティが魅力だ。ただ、なにが起こっているか、もう少しはっきり見せてもよかった気もする。想像する余地を残しているともいえるが。
「心霊処理場」(◆◆◆)は、封印映像のスタッフが投稿者とともに心霊スポットの廃墟を訪れると奇妙な出来事に遭遇する。おなじみ玉置氏が活躍するエピソードではあるが、意外にも(?)シリアスな味わい。観る者を真面目に怖がらせてやろうとする制作姿勢がうかがえる。廃墟のつくりがすばらしく、そこが見どころになるが、肝となる現象があまり怖くないのが惜しい。ほかのエピソードのように、実在感のあるモノが出てきてもよかったのではないか。タイトルのつけかたは秀逸で期待が高まるが、映像にはほとんど活かされていないのも残念。
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