[監修:鬼塚リュウジン/音楽・音響効果:荒井佑/2021年6月2日リリース]
- 「ピーグラスー」★★★
- 「くますず」★★★
- 「かあさんのふりをしたなにか」★★★★★
- 「三つ編みの女」★★★★
『封印映像』シリーズは、パート『27』あたりから「怖さ」より「面白さ」を優先してきていた。しかし、節目となる『50』を超え、再び「恐怖」路線に回帰しているように思う。
本パートに収録された「かあさんのふりをしたなにか」は、それを象徴するエピソードといえる。
また、これまでコミックリリーフの役目を負っていた玉置氏を始めとする若手スタッフも、“悪ふざけ”することなく、真摯に怪異に向き合っている。これも注目ポイントだ。
レビューする側も、初心に返り「恐怖」を作品の判断基準にすることにし、評価の度合いを示す記号を「◆」から「★」に戻したいと思う。
「ピーグラスー」(★★★)は、友人とキャンプを楽しむ様子を撮影していると、奇妙なモノが現われる。一般にはなじみのない、目新しいバケモノや妖怪を紹介する「モノノケ図鑑」といった趣のエピソード。造形がなかなか不気味なのもさることながら、撮影者に容赦なく危害が加えられるのも恐怖度を高めている。
「くますず」(★★★)は、学校の課題として山道で虫や植物を撮影していると、不気味な男と遭遇する。これも「モノノケ図鑑」といえるエピソード。「ピーグラスー」とは異なり、相手に実体感があり、撮影者との距離も近い。かりにバケモノの類いでなかったとしても、実際に同じような目に遭ったらとてつもない恐怖を覚える。そんな想像ができてしまう。
「かあさんのふりをしたなにか」(★★★★★)は、友人の家で勉強する様子を撮影していると、信じがたい光景を目の当たりにする。ここ数年の作品のなかでは出色の出来栄えだ。
タイトルから、「『かあさんのふりをしたなにか』が出てくるのだろう」と簡単に想像できる。つまり、タイトルでネタバレしているわけだ。単に制作陣が迂闊なのか、それともネタバレしても怖がらせる自信があるのか……。結果は、後者だった。
怪談や都市伝説では、よくある話かもしれない。「モノノケ図鑑」として、予想を超える異形が出てくるわけでもない。
ところが、日常の一部を切り取った映像にちょっと怪異が映り込むだけで、とてつもない説得力と存在感が生まれる。
映像もそれなりに怖いのだが、むしろ映像の“向こう側”を想像せずにはいられない。つまり、この投稿映像が撮影される前も、そしてその後も、「かあさんのふりをしたなにか」は友人の家に居座り続けているのだ。その事実に震えてしまう。
「おすすめエピソード」の〈松〉レベルにランクインさせてもいいかもしれない。
「三つ編みの女」(★★★★)は、カップルでボートに乗る様子を撮影していると、奇妙な出来事に遭遇する。本エピソードも、異形の造形や現われ方は平凡だ。しかし、ちょっとひねりを加えることで、独特の不気味さを醸し出している。いたずらに深追いせず、余韻のある終わらせ方をしているのもよい。
この記事へのコメントはありません。