[監修:鬼塚リュウジン/音楽・音響効果:荒井佑/2018年8月3日リリース]
- 「脱皮」◆◆◆◆
- 「廃工場に蠢く」◆◆
- 「宝物箱」◆◆◆
- 「呪界の記録」◆◆◆
パート37は、全体的になんとも物足りない感じを覚える。ただそれは、パート36の出来栄えがあまりに良すぎたせいであって、けっして『37』のクォリティが低いわけではない。とはいうものの、あと一歩踏み込んでもらいたかったという想いもあり、シリーズのファンとしては複雑な心境だ。
そんな『37』のなかでは、「脱皮」がもっとも出来がよい。中学校の同窓会の帰りに撮影者たちが恐怖に遭遇する。本シリーズらしい思い切った表現が成果を挙げている。ポイントは、「なぜそうなるか」がよくわからない点にある。怪異をもたらす相手も幽霊なのか、それともモノノ怪の類いなのか……。その煮えきらない感じが作品に不気味なテイストを与えている。
「廃工場に蠢く」は、映像制作会社が廃工場をロケハンした際に撮った映像。「表題作は奮わない」という本シリーズのジンクスどおり、いささか不満の残る仕上がり。「廃工場」という魅力的なホラー空間を舞台にしながら、そこで起こる怪現象がその「空間」に負けている。「蠢く」というおどろおどろしいタイトルもいたずらにハードルを上げている気がする。
「過去にこういう事件があったから、このような現象が起こったのだろう」などと、論理的に説明がつけられてしまうと、物語として腑に落ちても、恐怖は殺がれてしまう。せっかく田中さんが出張ってきた案件なのにもったいない。
「宝物箱」は、同級生の隠した宝物箱を探す様子をスマホでとらえる。「いったいなにが出てくるのか」と、期待と不安をあおる展開が良い。そこで起こる現象の意味はわからないが、だからこそ、そこはかとない気味の悪さが漂う。情報の出し方が的確で、観る者に想像する余地を残しているのも評価できる。
「呪界の記録」は、肝試しの様子を映したとおぼしき映像。雨が降りしきる深夜の林のなかで、若者たちが儀式めいたことを行なっている。全編に剣呑な雰囲気が漂っているのが見どころだ。怪異の背景も、なかなか珍しい題材をモチーフにしている。もう少しえげつない現象が起これば良かったのだが……。
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