[監修:鬼塚リュウジン/音楽・音響効果:荒井佑/2020年3月4日リリース]
- 「海の家」◆◆◆◆◆
- 「ヤドカリ」◆◆◆◆◆
- 「ヒッチハイク」◆◆◆◆◆
- 「抜苦与楽」◆◆◆◆◆
この『45』はシリーズの節目になるかもしれない。
古くからシリーズを観ている人に向けたファンサービスとして、あるいはシリーズを初めて観る人に対する入門編としての役目を本パートは果たす。
良くも悪くも“おふざけ感”が漂っていたこれまでとは打って変わって、本パートでは、「ホラーとは?」「恐怖とは?」という根源的な〈問い〉に向き合う。その結果得られた〈答え〉が4つのエピソードに結実している。
本パートで提示されている〈答え〉とはなんだろう? 「ひょっとすると自分のまわりでも起こるかもしれない」という〈現実感〉と、「実際に自分の身に起こったとしたら生きた心地がしない」といった〈恐怖感〉。この2つの味わいを絶妙に混ぜ合わせること。それこそが“恐怖映像シリーズ”の醍醐味だという〈答え〉だ。
本パートでは、〈現実感〉と〈恐怖感〉をブレンドする割合がエピソードごとに絶妙に変えられている。つまり、さまざまな恐怖のバリエーションを愉しめるようになっているのだ。古くからのシリーズのファンはある種の懐かしさを覚え、初めてシリーズを観る人は『封印映像』の力量を測り今後の視聴の指針にできる。だからこそ、シリーズのファンはもちろん、初めて『封印映像』に触れる人も必見のパートといえるわけだ。
「海の家」(◆◆◆◆◆)は、恋人と海水浴を愉しむ様子を撮影していると、恐るべき体験をする。コトの真相が心霊現象であろうと、なにかしら合理的に説明のつく現象であろうと、そんな理屈はお構いなし。問答無用で恐怖のどん底に突き落とされる(いや、引きずりこまれる)のが魅力だ。なにげない場所がじつは〈死〉と隣り合わせにあったことを気づかせてくれる。
「ヤドカリ」(◆◆◆◆◆)は、友人が連れてきた怪しい女性が“お祓い”をする様子を隠し撮りする。シチュエーションや設定は、じつはこの手の作品としてありふれたものかもしれない。だからこそ、「実際に起こったら嫌だな」という盤石な恐怖心が観る者のココロに生まれる。怪異の背景を考えると、異形の造形は過去作品(『封印映像6』に収録の「浮気調査」)ぐらい“遊んでも”良かった気がするが、悪くない匙加減であったとも思う。
「ヒッチハイク」(◆◆◆◆◆)は、ヒッチハイクをしている女性を車に乗せたところから恐怖の体験が始まる。このエピソードも見慣れたシチュエーション。展開もおおよそ予想がつけられる。しかし、最後まで観る者を飽きさせず手堅くまとめあげている手腕はお見事。最後のちょっとした“味つけ”も『封印映像』らしいといえるだろう。
「抜苦与楽」(◆◆◆◆◆)は、アパートで起こる不可思議な現象を記録していると、信じがたいモノが映りこむ。自分の住む部屋のせまい空間で怪異が起こるのがまず恐怖。逃げ場がどこにもないからだ。スタッフの調査などでいちおう怪現象の説明はつけられるが、どことなく理屈に合わない。その“余白”に恐怖が入り込む隙が生まれる。『封印映像』ならではの“えげつなさ”も“調味料”として効いている。
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