[監修:鬼塚リュウジン/音楽・音響効果:荒井佑/2017年6月2日リリース]
- 「クレーム処理」◆◆
- 「竹やぶ」◆◆
- 「恋人たちの晩餐」◆◆◆
- 「池のほとりの蓮美さん」◆◆
前作(『28』)はやや不満の残る仕上がりだったが、この『29』は、『封印映像』シリーズとしては及第点に達していると思う。
「クレーム処理」は興味深い現象。ただ、恐怖度はそれほどでもない。それらしい異形のモノが出てきてもよかったと思うのだが。
とはいえ、この作品はコース料理でいえば“オードブル”みたいなものだから、これくらいの匙加減でよいのかもしれない。
「竹やぶ」は「心霊スポットに遊びにいって霊が現れる」という何億万回と繰り返されたシチュエーション。それだけに、安定感・安心感がある。
映像の仕上がりは丁寧で好感は持てるものの、この「安定感・安心感」が恐怖を削いでしまっているのが残念なところ。
結末が「えげつない」のだが、この部分が映像化されていないのもよくない。過去作には「えげつない」部分もちゃんと映していたわけだし。
「恋人たちの晩餐」は、『29』の“メインディッシュ”といったところ。ストーリーがよく練られており、オー・ヘンリーや星新一の短篇を読んでいるような“読後感”がある(……たとえとしてすごい名前を挙げすぎたか)。
画期的なアイディアというわけではないが、このような心霊ビデオ・投稿映像のフォーマットに落とし込まれると新鮮さを感じる。
しっかり「えげつない」映像があるのも評価ポイントだ。
また、プライバシー保護のモザイクを逆手にとった、さりげない演出にも注目したい。
「池のほとりの蓮美さん」は表題作で、もうひとつの“メインディッシュ”。なかなかおもしろい造形の異形が登場し、『封印映像』シリーズの面目躍如といった仕上がり。
怖がればいいのか、笑えばいいのか、戸惑いを覚えるが、「戸惑い」こそが『封印映像』の持ち味でもある。
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