[監修:鬼塚リュウジン/音楽・音響効果:荒井佑/2017年5月2日リリース]
- 「エレベーター」◆
- 「千九山」◆
- 「死身」
- 「幽霊アプリ」◆
前作(『27』)のレビューで述べたとおり、本シリーズは必ずしも観る者を怖がらせようとしていない。だから、あんまり怖くなくてもマイナスの評価にはならない。
とはいえ、本作は「ちょっと踏みこみが足りないのではないか」という不満を抱いてしまう。それは、前作の出来が良かったので、こちらの期待値が高かったこともあるだろう。「『27』と『29』に力を入れたので、この『28』は箸休めです」ということならいいのだが……。
「エレベーター」は、エレベータの監視カメラがとらえた映像。舞台となるエレベーターそのものがどこか異界のような雰囲気を醸し出している(扉の向こう側が異様なほど暗闇に包まれている)のは評価できる。
しかし、ここまで非現実的な空間なら、もっと派手な怪異が起こってもよさそうなのだが、『封印映像』シリーズにしては、おとなしい仕上がりで、物足りない。過去作ではインパクトのある現象がたくさん見られるわけだし……。
「千九山」は、有名な異形(妖怪というべきか)を題材としたもの。伝奇小説を読んでいるみたいで興味がそそられる。
だが、いかんせんありふれた素材であり、時間も短いので、満足するまでにはいたらない。投稿者たちがもっとひどい目に遭っていればまた印象はちがっていたと思うのだが……。
「死身」は、出来が悪いわけではないのだが、2017年に、それも『封印映像』でやることではないように思う。10年前の心霊ビデオならこれでも喜んだのだが……。
「幽霊アプリ」は、文字どおり幽霊を探知するアプリがモチーフ。「ほんとに幽霊が現れちゃった!」という展開になることは、タイトルを見た瞬間に予想できるが、こちらの想像の域を出ないのが残念。異界のモノがその場にいたかのような実在感がもっとあれば……。これも現象そのものはひと昔前の味わいだ。
いくらでも怖い展開にもっていけそうな題材なだけにじつに惜しい。
また、真相を究明するために霊能力者を呼び寄せるが、肩透かしの結末に終わる。それ自体は制作者の意図したものだろうし、良い効果を上げる場合もあるだろう。だが、本作の収録作品を振り返ると、すべて「肩透かし」のように思えてしまい、マイナスに働いている。
『29』にはぜひ期待したい。
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