[プロデューサー:小田泰之/編集・構成・演出:Team XXX/音楽・音響効果:ボン/編集・MAスタジオ:スタジオミック/製作:アムモ98/2017年4月7日リリース]
その声の結末
本作に現われるモノは、一見すると絵に描いたような心霊の類いに思える。自分がカメラを構えているときにそんな存在に遭遇したら、もちろん恐怖を覚えるだろうが、第三者であるわれわれは、それなりに怖がりながらも「よくあるパターンだね」とすぐに平常心をとりもどせる——はずだった。
本作の「心霊の類い」は、ただ姿を見せ、投稿者(視聴者)を恐怖させただけではすまない。時空を操る能力を有しているような、尋常ではない相手であることをうかがわせるのだ。
ただし、ほんとうに本作の「心霊の類い」はそんな能力の持ち主なのか? 投稿映像を見るかぎりはそうとしか思えないが、確固たる証拠はない。真相がわからないところに不条理を感じ、恐怖が生まれている。
煙草の臭い
〈死〉と〈心霊現象〉。両者が結びつく瞬間を本作では目の当たりにする。「幽霊とは、この世に強い想いを残して死んだ魂が彷徨いつづけているもの」と、なんとなくわれわれが理解している「幽霊」の定義を、本作は裏づけてくれる。
とはいえ、「幽霊のことがわかってよかったね」と無邪気に構えていてよいのだろうか。投稿者はそうしているようだが、映像を見るかぎり、とんでもないしっぺ返しを喰らいそうな雰囲気も漂っているのだが……。
付着物
本作に現われる異形は、これまで見たことのない画期的なふるまいをする。上記2作のような「心霊の類いとはこういうもの」という既成の概念が通用しない。
ふるまいが見慣れぬものなのだから、現われたモノはほかの「心霊の類い」とは異なる存在、ということになるが、「では何なの?」と問うても、投稿映像から答えは見つけられない。
文字どおり原因不明の災いが投稿者に降りかかっており、観ているわれわれも心穏やかではいられない。
夜の騒ぎ
本作に登場する「心霊の類い」と思しき存在は、映像に映り込むだけで、投稿者に直に働きかけたりはしない。けれども、観る者にいくばくかの恐怖心を植えつける。
その理由のひとつは、出現するシチュエーションが剣呑な雰囲気に満ちていること。いわば非日常的な空間に〈それ〉は現われている。
もうひとつは、なんらかの悪意を感じさせる点。たしかに、投稿者はなにもされていない。でも、なにかしようとしていたのではないか。なにも起こっていないからこそ、起こったかもしれない災厄、あるいはこれから起こるかもしれない災難を想像してしまう。
アルプス一万ジャック
本作の映像に映る異形は、手でさわることができる。もちろん「心霊の類いは、この世のモノではないから、直に触れられない」という決まりがあるわけではない。
本作では、相手はいわゆる「心霊の類い」ではないことが示唆される。だからこそ、触れられたのだろうが、見間違いや聞き違い、勘違いではなく、確固たる存在として、そのときそこに〈それ〉はいた、ということを示している。
その事実には慄然とせざるをえない。
鬼国(きこく)
本作は、上の「アルプス一万ジャック」と関連すると思しき映像が紹介される。ただの「心霊の類い」ではないことがすでにあきらかなので、ここで見せられる「映像」を、われわれは固唾を飲んで見守ることになる。
といっても、じっくり目を凝らしてもなにかがわかるわけではない。おそらく何者かが意図をもって撮影した「映像」ではないからだ。では、なぜそんな映像がビデオテープに収まっていたのか。理由は想像するしかないのだが、いくら考えても恐怖心しか生まれない。
この記事へのコメントはありません。