[監修:鬼塚リュウジン/音楽・音響効果:荒井佑/2021年3月3日リリース]
- 「リモート飲み会」◆◆◆
- 「訪問介護」◆◆◆
- 「観察日記」◆◆◆◆◆
- 「ココデミテル」◆◆◆◆
『51』は一見すると“通常運転”のように思える。それなりに怖く、それなりに遊び心があって、予想を大きくはずれることはなく、期待も裏切らない。
ただ、注意深く観ていると、これまでにない新しい要素が盛りこまれている——いや、これから新機軸が打ち出される。そんな予感めいたものを感じさせる。
制作陣にはそんな意図は毛頭ないかもしれない。しかし、観る者としてそう感じてしまったのは事実。そこが本作の評価ポイントになる。
「リモート飲み会」(◆◆◆)は、リモート飲み会の様子を記録した映像に奇怪な現象が映りこむ。あらゆるホラー作品において、モノノ怪の類いは最新のデジタル機器の扱いに長けている傾向があり、本作もこの時世ならではの怪異ということになる。
なかなか興味深い現象ではあるものの、いまいちなにが起こっているかわからない——そこがモノノ怪たるゆえんなのだが、もう少しいわくなどを掘りさげてもよかった気がする。
「訪問介護」(◆◆◆)は、介護を受ける男性をスマートフォンで撮影していると、不気味なモノが現われる。異形は明らかに悪意を持っているとおぼしく、その意味で恐怖度が高い。ただ、現象としては凡庸なのが惜しいところ。
「観察日記」(◆◆◆◆◆)は、家の柱に現われた奇妙な物体を撮影していると、恐るべき事態に巻きこまれる。
田中氏と玉置氏が共演。本パートの白眉となるエピソードだ。かたやシリアス、かたやコミカル。両者は本来なら水と油。混ぜてはいけない洗剤。そんなふたりを組み合わせてしまえ。この一点のみで推し切るエピソードと思わせながら、じつは前述の「新機軸」の“芽”のようなものが巧みに仕込まれているのだ。
ただ、それは当ブログの妄想にすぎないのかもしれない。詳細は、のちのパートで確信を持てるようになったら述べてみたい。
本エピソードは、要となる投稿映像にもこだわりを見せている。異形の造形や話の展開のしかた、情報の濁り具合など、『封印映像』シリーズの面目躍如といった仕上がりだ。
「ココデミテル」(◆◆◆◆)は、ストーカーが撮影した映像に、あの世のモノとおぼしき存在が映りこむ。
前半はどこかで見たような展開になると思わせ、後半は意外な方向にお話が転がっていく。田中氏が活躍するエピソードとしても注目したいところ。
なぜ田中氏は幸運にも(いや不運にも)異形に遭遇することができたのか? 「ご都合主義」のそしりを受けそうな展開ともいえる。しかし、ここに「観察日記」で妄想させられた要素を加味すると、腑に落ちるしかけになっている。
ほんとうに制作陣がそこまで意図しているかはわからない。計算づくだとしたら、お見事というほかない。
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