[監修:鬼塚リュウジン/音楽・音響効果:荒井佑/2020年7月3日リリース]
- 「やさしい看護師さん」◆◆◆◆
- 「野菜泥棒」◆◆◆
- 「着席」◆◆◆◆
- 「真っ赤な風船」◆◆◆◆◆
パート『48』は、〈恐怖感〉こそ高くはないものの、“意外な展開”に重きを置いた作品がそろった。観る者の予想を裏切ることは娯楽作品のイロハのイ。まさに王道のつくりといえる。
単純に「裏切る」だけでなく、心霊ビデオの“アンチテーゼ”を提起している観もあり、今後もその方向性を追究してもらえるなら、本シリーズのファンとしては大歓迎だ。
「やさしい看護師さん」(◆◆◆◆)は、余命宣告を受けた入院患者が病室で撮影した映像に怪異が映りこむ。タイトルどおり「看護師」がなにかをしでかすのだろうと簡単に予想がつけられる。「病院」という舞台も心霊スポットとしては凡庸だ。ところが、落としどころにひねりが加えられているために、“読後感”はけっして凡庸ではない。ホラーの名手・鶴田法男監督のようなテイストすら漂う——というのは言いすぎだろうか?
「野菜泥棒」(◆◆◆)は、畑に監視カメラを設置し野菜泥棒の様子を記録しようとするが、意外なモノが撮影されてしまう。怪現象は手堅いつくりでクォリティーは及第点に達している。ただ、欲をいえば、異形をもう少し恐くできたのではないかとも思う(けっして出来が悪いわけではないのだが)。このエピソードもなんとなく“鶴田テイスト”が香る作品になっている。そこも注目ポイント。
「着席」(◆◆◆◆)は、ホールの管理人のアルバイトをしている投稿者が奇妙な出来事に巻きこまれる。こちらも怪現象の描写に手抜かりはない。また異形が撮影者に直接的に働きかけてくるのは、やはり〈恐怖感〉が高い。映像に異変が生じているわけだが、はたして肉眼ではどう見えた(感じた)のだろう? そんな想像も広がっていく。
「真っ赤な風船」(◆◆◆◆◆)は、恋人たちの日常を撮った映像に赤い風船にまつわる怪異が記録される。表題作ということもあり(本シリーズの場合「表題作にもかかわらず」というべきか)、本シリーズのヒーロー(?)、霊能力者の中深迫氏が登場。『48』のなかでもっとも高い完成度を誇るエピソードだ。展開がまったく予想できず、怪異の背景にも奥深さを想像させる。
ただ、本作では「真っ赤な風船」が恐怖を呼びおこすキーアイテムになっているわけだが、もっとあからさまに禍々しさを感じさせるモノであったらなお良かった気もする(「赤ではなく【黒い風船】にする」「風船とは思えない挙動をする」「風船に血がついている」とか)。もちろん、これは個人的なわがまま、「あえてイチャモンをつければ」の話。本シリーズのファンおよび一見さんも十分に満足できる出来栄えであることはまちがいない。
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