[演出:KANEDA/構成:KANEDA・新津徳也・美濃良偲/ナレーション:中村義洋/2019年7月3日発売]
- 「ナイトサファリ」★★★★
- 「佇むもの」★★★★
- 「静止する身体 前編」★★★
- 「初日の出」★★
- 「何を呼ぶ」★★
- 「マジシャン」★★
- 「切断」★★
- 「静止する身体 後編」★★★
本シリーズ恒例の「夏の三部作」の始まりである。今年のタイトルは「静止する身体」(★★★)。友人との何気ない会話を撮影した映像に怪異が紛れこむ。興味深い現象ではあるものの、不気味さや怖さが足りない。単独の作品なら評価できるのだが、長編取材モノとして視聴のモチベーションを保つには力強さに欠けるような気がするのだ。期待半分、不安半分といったところで、★印は中立の3つとした。
本質的なことではないが、ナレーションで投稿者たちを「さん」付けにしていない点が気になる(過去のシリーズでは「さん」を付けていたはず)。投稿者たちは仮名だし、目くじらを立てることではないのだが、中村さんの声で呼び捨てにされると、投稿者たちがまるで“容疑者”のように思えてくる――もしかして、騒動の黒幕だったりするのだろうか?
そのほかは、序盤の2作品こそシリーズの面目躍如といった仕上がりだが、中盤以降が奮わない。出来が悪いわけではない。ただ、シリーズも(specialを含めて)100巻近く重ねてくると、こちらの目も肥えてしまっていて、ちょっとやそっとでは心は動かされないのだ。
「ナイトサファリ」(★★★★)は、夜のサファリパークを観光する様子を撮影したもの。動物の姿に紛れるようにこの世ならざるモノが出現する。現象そのものはありがちだが、“心霊”に実在感がある点に注目したい(フラッシュの光を反射している)。となると、じつは飼育員がそこにいただけ、と解釈する余地もありそうだ。とはいえ、その姿を見るとやはり生きた人間ではあり得ないので、そこが恐怖のポイントになる。
「佇むもの」(★★★★)は、バイクで走行する様子をヘルメットのカメラで撮っていると不可解な女が現われる。じつは現象そのものは過去作を思い出させる(『49』に収録の「繰り返す男」)。その意味で二番煎じなのだが、本作は投稿者が生命の危機にさらされてしまうので、より恐怖度が高い。
「初日の出」(★★)は、初日の出を撮影していると異形が映りこんでしまう。初日の出を撮ろうとしているのに、関係のない場所を映そうとカメラを動かしているのは、いかにも不自然。案の定、〈出現域制御〉によって異形は現われる。造形が不気味な点は評価するが、既視感あふれる現象なのは否めない。「ただそこにいる」のではなく、もっと異形に動きがあったりすればよかったのだが……。
ほんとにあった!呪いのビデオ「初日の出」 – YouTube
「何を呼ぶ」(★★)は、カップルが温泉旅館で卓球を楽しむ様子を撮影したもの。「部屋の窓に異様なモノの姿が映る」と事前に説明されていたのにもかかわらず、見逃してしまった。それほど微妙な現われかたで、ただの光の加減なのでは? と思ってしまう。拡大するとそうではなさそうだが、初見のインパクトは小さい。いちおう怪異を二段構えにするなど工夫はしているが……。本作にも〈出現域制御〉の問題がある。
「マジシャン」(★★)は、路上でマジシャンが手品をおこなう様子を撮っていると、不気味な存在が現われる。本作も初見では見つけられず。その姿ははっきりとしているが、どうしても手品のほうに目を向けてしまう。怪異の背景も語られるが、どこか理屈めいており、マイナスの要素になってしまっている。〈出現域制御〉の問題も気になるところ。
「切断」(★★)は、投稿者がヨーロッパを訪れた際に撮られた映像。「切断」というタイトルが剣呑で、現われるモノも不気味だが、やはり初見ではわからなかった。本作も〈出現域制御〉。現われた異形は「ナイトサファリ」に現われたモノとちがって実在感がない。どちらも“ホンモノ”だとすれば、この世ではまったく異なる性質の心霊現象が起こっていることになる……。
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