[演出:藤本裕貴/構成:藤本裕貴、田中翔/製作:張江肇、鈴木ワタル/プロデューサー:張江充、岩村修/演出補:男鹿悠太、木勢まりあ/演出協力:菊池宣秀、寺西涼/構成協力:関口さと子/音楽・音響効果:ボン/ナレーション:中村義洋/2023年1月6日発売]
- 「笑う女」★★★
- 「神隠し」★★
- 「ロボット掃除機」★★
- 「怨音 前編」★★★★
- 「封印」★★
- 「合わせ鏡」★★
- 「福知山」★★
- 「怨音 後編」★★★★
長編「怨音」(★★★★)は、「なにか剣呑なことが起こっているらしいが、それがなんなのかわからない」という展開。これは悪くない。スタッフの調査によってあるていど真相はつかめているように見えて、“闇”は残ってしまうわけだ。観ている側が衝撃的な恐怖を味わうわけではないが、うすら寒い“読後感”はなかなか魅力的だと思う。
「笑う女」(★★★)で起こることが心霊現象かどうかはともかく(異様な出来事であることはまちがいないが)、女の笑い声がただただ不気味。女が“この世ならざるモノ”だから怖いのか、じつはふつうの人間だったほうが怖いのか。どちらともいえないところが本作のポイントだ。
「神隠し」(★★)の背景にあるらしきエピソードは、それなりに哀愁を漂わせていて悪くないが、現象はつくりものめいている。そんなに都合よく異形が映りこむものだろうか?
「ロボット掃除機」(★★)は、床から天井にカメラが向けられ動きまわる。ふだんは見えないところで人知れず超常的な現象が起こっている——といった映像を期待したのだが、実際はそうではなかった。そこが惜しいと個人的には思ってしまう。
「封印」(★★)の映像に映っているようなモノが現われたら、なおかつ自分がその場にいたとしたら、たしかに恐ろしい。しかし、「幽霊ってそういうものですよ」と、やや作為めいたものも感じる。ニセモノっぽさとはまた異なる嘘くささ、理屈っぽさが興を削いでいるようにも思うのだ。
「合わせ鏡」(★★)で怪異は2つ起こる。ひとつは光の加減でそう見えるだけ、と解釈できそうだ。その意味では“ホンモノ”かもしれない。つまり、超常的なものではないのかも。しかし、もうひとつの現象は合理的な説明がつかず、そうなるとやはり怪奇現象といわざるをえない。
「福知山」(★★)の映像に映る現象と、ナレーションで語られる内容に因果関係がつけられてしまうため、かえって作りものめいたものになってしまっている。もちろん、因果関係のあることが怪異を否定することにはならないが、観ている側の心情としては「話が出来すぎている」と感じてしまうのだ。
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