[演出:KANEDA/構成:KANEDA・新津徳也・美濃良偲/ナレーション:中村義洋/2019年8月3日発売]
- 「地鉄」★
- 「長いトンネル」★
- 「従兄弟の家」★
- 「続・静止する身体 前編」★★
- 「ポンプ車」★
- 「不気味な彫刻」★★
- 「続・静止する身体 後編」★★
このパートには夏の三部作「静止する身体」の中編が収録されている。構成はそれなりにしっかりしているとは思うのだが、いかんせん現象がありふれていて、恐怖を感じるところまでいかない。“呪いの専門家”らしき人物に謎の解明を手助けしてもらうなど、観る者を飽きさせない工夫がほどこされているものの、20年の歴史を持つ本シリーズのスタッフこそ「呪いの専門家」ではないのか? と細かいツッコミが頭をよぎる。
そのほかの作品は、ほとんどが初見で見つけられないモノばかり。「初見で見つけられない」ことのなにが問題かといえば、「投稿者がどうやってそれを見つけたのか」という疑問が解消できない点にある。たとえば、心霊スポットを探索しながら撮られた映像なら、どこかに異様なモノが映り込んでいないか、目を皿のようにして探すだろう。だが、そのような意図を持たずに撮影された映像を、「奇妙な現象が起こったはず」という予断を持たずに観直して、はたして投稿者は異変を発見できるだろうか。その疑念が拭えないため、どうしてもニセモノっぽさが漂ってしまうのだ。
「地鉄」(★)は、中国の地下鉄のホームで撮られた映像に異変が記録される。初見ではわからず、リプレイで観てもわかりづらい。「奇妙だ」とナレーションで説明されたから「まあ、奇妙な現象なのだろう」と思うものの、やはり投稿者がどうやってこれを発見したのか疑問が残る。
「長いトンネル」(★)は、文字どおり人気のない長いトンネルで奇妙な人物が映り込む。これも「あり得ない出来事」のように紹介されているので、観る側としてそのように理解しようと努めるのだが、とくに超常的な現象ではない可能性もあるのでは? もう少し「ふつうでない現象」の雰囲気を醸し出してほしかったところ。本題とは関係ないが、この映像が撮影されたのは、こちらの別のシリーズの作品と同じ場所だろうか?
「従兄弟の家」(★)は、投稿者が子どものころに撮影された映像に不気味な存在が映っていた、というもの。やはり初見ではわからず。リプレイで見るとたしかに「不気味」で、その造形は評価したいが、“恐怖映像”としての面白みには欠ける。
「ポンプ車」(★)は、消防訓練をしているときに不可思議な現象が起こる。これも幸運に恵まれないと初見では見つけられないだろう。リプレイで見ても集中力を欠いていると見逃してしまう。きわめて微妙な現象といえる。しかも、前巻の作品とネタが被っている気もする。
「不気味な彫刻」(★★)は、“地獄絵図”をモチーフにした彫刻の展示を撮影していると、背筋の凍る現象を目撃してしまう。この彫刻の造形だけで“恐怖映像”として成立してしまっている。それでは「呪いのビデオ」とはいえまい。核心となる現象はそれなりに不気味で評価できる。しかし、そのような仕掛けがほどこされた彫刻だった可能性もありそうだが。
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