[監修:鬼塚リュウジン/音楽・音響効果:荒井佑/2019年7月3日リリース]
- 「泣く女」◆◆◆◆
- 「お手入れさん」◆◆◆◆
- 「アメダマリ」◆◆◆◆
- 「死水」◆◆◆◆
『42』は、前巻の汚名を返上するかのように、〈封印映像〉の持ち味を活かした良作がそろっている。いずれの作品も、シリーズを特長づけていた要素を盛り込みつつ、そこで満足することなく、ひとひねり加えて質が高められている。シリーズのファンとしても十分に満足できる出来栄えだ。ある意味で〈封印映像〉らしく、別の意味では“らしくない”パートいえる。
サブタイトルは「死水」。「表題作ほど奮わない」というジンクスは本パートには当てはまらない。これは嬉しい誤算だ。また、それぞれの作品は独立しているが、いずれも“水”にまつわる話として一本芯が通っている。やはり〈封印映像〉らしからぬ(?)小技といえるかもしれない。
「泣く女」は、ホテルの部屋にデリバリーの“マッサージ”の女性を呼んだ男が恐怖の体験をする。“異形の女”が登場するパターンで本シリーズの十八番。表現をギャグすれすれまで振り切っているのは観ている側としては大歓迎だ。“それ”が落下する音など、細かいところまで配慮が行き届いているのが作品のクォリティアップに一役買っている。
「お手入れさん」は、儀式によって不可思議な存在を呼び出そうとするお話。これもシリーズの定番の展開といえる。「とどのつまり、トイレの○○さんだよね?」と最初はツッコミを入れるも、カメラの前で凄惨な悲劇が描写されるから、「○○さん」とは異なる脅威を感じさせる。このひねりがうまく利いている。
「アメダマリ」は、道端にある“水たまり”で怪異が撮影される。着眼点の巧みさが光る一作。ほどよく不可解で、観る者のイマジネーションがかきたてられる。映像のテンポも抜群。小道具の使い方もうまい。
「死水」は、いわくつきの部屋で除霊を行なう。心霊ビデオの類いでは、何百万回と繰り返されてきたシチュエーション。現象そのものも凡庸だ。しかし、そこに〈封印映像〉らしい味つけをほどこすと、非凡な作品ができあがる。霊能力者のジョン氏と中深迫氏が共演。それだけで本作の“勝ち”は約束されたようなものだ。ひとつわがままをいえば、現象をもっと怖いものにしても良かったと思う。
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