[監修:児玉和土/プロデューサー:佐々木良夫/音楽・音響効果:荒井佑/2019年10月2日リリース]
- ビル ★★★★
- 魔窟4 妹の行方 ★★★★
- お面 ★★★★
『23』は、本シリーズならではのクォリティの高さと恐怖感を堪能できる。収録された作品はいずれも、核心となるネタは「これまでになかった画期的なもの」というわけではないのだが、話の運び、小道具、編集のリズムが絶妙で、存分に満足感に浸れる。
このパートの魅力についてこれ以上語る必要はなく「とにかく観てください」としか言いようがないが、いちおう各エピソードについてコメントしておこう。
「ビル」は、カップルがラブホテル代わりにしているビルの空きフロアに侵入。盗撮を試みようとするも想像を絶する怪異に遭遇する。かなり特殊な舞台設定で「そんなヤツいるかよ」とツッコミたくなるが、その疑問や違和感はすぐに消し飛んでしまう。撮影者たちが生命の危機にさらされ、緊迫感・切迫感が観る者のココロにまで波及するからだ。前述のとおり、落としどころに新鮮味こそないものの、それによって恐怖感が削がれることはない。
「魔窟4 妹の行方」は、例の廃墟でまたしても犠牲者が出る。現地で撮られた映像としては最後の1本となるらしい。「すでに見慣れた場所」「陽の光が建物のなかに差し込む昼間」など、恐怖を削ぐマイナス要素にあふれながら、そのハンデをものともせず、きっちり怖がらせてくれる。やはり核心部分に既視感があり*、異変の背景にも理屈っぽさが漂うが、その見せかた・語りかたが絶妙で、まったく退屈しない。
*ただし、この既視感には正当な理由があるように思われる。
「お面」は、怪現象が起こるとされる旅館で“アイドル”が悲劇に見舞われる。これも何度なく繰り返されてきたシチュエーション。現象そのものより、“アイドル”とディレクターの関係性に焦点をずらしながらも、終盤でホラーな雰囲気たっぷりの小道具が登場。その後の展開は「まあそうなるよね」と予想がつけられるが、それも制作陣の計算のうち。うるさ型のホラーマニアも飽きさせない描写でしっかりと満足させてくれる。
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