[演出:KANEDA/演出協力:菊池宣秀・藤本裕貴・細沼孝之/ナレーション:中村義洋/2019年11月27日発売]
- 「神の視点」★
- 「シリーズ監視カメラ 簡易宿泊所」★★
- 「Propagation 前編」★★
- 「手筒花火」★
- 「監視者」★★★
- 「七夕」★
- 「Propagation 後編」★★
演出がKANEDA氏に交代してから全体的に現象が地味になっている。そのほうが“ホンモノ”っぽく、“ドキュメンタリー”らしさも出るのはたしかだ。好意的に解釈すれば、制作陣はそれを意図しているものと思われる。したがって、けっして作品としてのクォリティが低いわけではない。
しかしながら、(前にも述べたとおり)20年の歴史を誇る心霊ビデオシリーズの雄がとるべき路線ではない、と当ブログは考える。理由は単純に「怖くない」から、ひいては「面白くない」からだ。
もちろん、観る者の中には「怖い」より「ホンモノっぽい」ほうを好む人もいるだろう。だが、本シリーズを観続けているのは、あくまで〈恐怖〉を求めている人だと思うのだが……。
さて、本パートから、2巻にまたがる長編「Propagation」(★★)がスタート。それなりに緊張感があり、滑り出しとしては悪くない。ただ、よくある話と映像で目新しさがないのは、やはりマイナスポイントとなってしまう。話や設定はありふれていても、被写体となっている人物がもっと異様な動きをするとか、工夫する余地は充分にあったかと思うのだが……。
「神の視点」(★)は、ドローンで撮影された映像に奇妙な現象が記録される。あの世のモノは、最新技術に対する適応力に長けているようで、過去にもドローンに働きかけて怪奇現象を巻き起こしている。今回はどんな悪さをしかけてくるのかと思っていると肩透かしを食らってしまう。ドローンならではの怪現象を見たかった。
「シリーズ監視カメラ 簡易宿泊所」(★★)は、簡易宿泊所に設置したカメラが不気味なモノをとらえる。地味な現象ながら、閉塞した空間で起こる点と、ほんとにありえそうなリアリティは魅力だ。あとづけの効果音でごまかされている気もするが、そこは目をつぶろう。
「手筒花火」(★)は、地方の伝統行事を撮影した映像に不気味なモノが映りこむ。初見では見逃してしまったが、リプレイで見るとたしかに興味深い映像になっている。そこはいい。だが、あまりにできすぎていて、「この世ならざるモノがなぜこんなカタチで出現したのか」という疑念が浮かんでしまう。浮かんだとしても、それを吹き飛ばすような迫力があれば評価もするのだが。
「監視者」(★★★)は、山奥の山村を肝試しに訪れた際に恐怖に遭遇する。過去作のオマージュのような趣で、本シリーズを昔から知る者はなつかしさを覚える作品だ。投稿者たちが危機にさらされる緊迫感を観る者も堪能できる。ただ、過去作とくらべると、異界のモノらしき存在がこれみよがしで、そのぶん恐怖感は薄れる。本作が悪いのではなく、過去作が優れているのだろう。
「七夕」(★)は幼稚園のイベントを撮影した映像に不気味なモノが現われる。初見で発見できず、リプレイでも見逃してしまった。この不気味なモノの正体がナレーションのとおりだとすると、もっとちがう現われかたをしてもよさそうなのだが……。造形は不気味なのでそこは評価したいが、出現のしかたに“芸”がない。
この記事へのコメントはありません。