[演出:KANEDA/構成:KANEDA・西貴人/演出協力:菊池宣秀・美濃良偲・藤本裕貴・細沼孝之・マキタカズオミ/ナレーション:中村義洋/2020年8月5日発売]
- 「繰り返される死」★★★
- 「スナック」★
- 「終・黒く蠢くもの 前編」★★★
- 「凍氷」★
- 「新婚旅行」★★
- 「棲みつくもの」★★★
- 「終・黒く蠢くもの 後編」★★★
このパートで長編取材モノ「終・黒く蠢くもの」(★★★)が完結する。まあ、卒のない仕上がりで“及第点”に達しているとは思う。だが、制作姿勢としては〈守り〉であり、20年におよぶ長期シリーズなら〈攻め〉も転じてほしかったところ。〈守り〉に徹していれば、それは“後退”につながってしまう。
3巻にわたりちりばめてきた要素はうまくまとめているが、その結果に目新しさがないのは惜しい。そう考えると、劇中で否定的にあつかわれる演出補・上田氏のふるまいにも一分の理があったことになる。また、あらためて振り返ってみると、やはり前回の分はまるまる不要だったように思う(二部作でよかったのでは?)。
そのほかの作品は、「初見ではわかりづらい」ものが見受けられるのが気になった。現象としては興味深くても、恐怖度は低く、したがって満足感も得られなくなってしまう。
「繰り返される死」(★★★)は、ドライブレコーダーに奇妙な現象が記録される。過去作のオマージュのような作品。異変が「繰り返される」と、それは実際に起こったのではなく、データの不備かなにかでは? と勘ぐってしまう。ただ、ラストにひとひねり加えているため、それなりに満足できる出来栄えになっている。ただ、現象のクォリティそのものは過去作のほうが高い気もする(過去作は影もついていてリアリティがあった)。
「スナック」(★)は、スナックで撮られた映像に不気味な存在が映り込む。肝心な部分は初見では見逃してしまった。異界のモノはそう都合よく出てきてくれない——という真実が表現されているのかもしれないが、もう少しわかりやすく出現してくれてもよさそうだ。
「凍氷」(★)は、とある観光地で凍った湖の様子を撮影していると、異様なモノが記録される。何度かリプレイされてもわからず、〈輪郭線〉で示されたところでなにが映っているか理解できた。〈輪郭線〉を描かなければ見えないモノを投稿者はどうやって見つけたのか? という疑問が頭に浮かぶし、〈輪郭線〉が必要なほどあいまいなら目の錯覚では? などと考えてしまう。もっとも、本作はそれなりにはっきりしているので、やはり“そういう存在”がそこにいたのかもしれない。
「新婚旅行」(★★)は、旅行先のホテルのエレベーターでカメラを回していると、不可思議な存在が映り込む。初見では“なにか”が映ったことにかろうじて気づいたが、“なに”が映ったかまではわからなかった。ただ、上の「凍氷」とは異なりカタチははっきりとしているし、ナレーションで語られるいわくを考えると、やはりこの世ならざるモノがそこにいたのかもしれない——と、なんとか納得はできる。
「棲みつくもの」(★★★)は、自宅で起こる怪現象の正体を探ろうと天井裏を撮影していると、恐るべきモノと遭遇してしまう。投稿者とその友人へインタビューをし、不気味な雰囲気を盛りあげていくところが良い(ふたりの語る内容が重複しているのは気になったが)。ただ、その“怪談”の部分がよく出来すぎていて、映像が負けてしまっている。現われるモノはそれなりに不気味で評価もするが、“怪談”の内容を踏まえると、“逆さま”に映るべきではなかったか(そのほうが不気味さもより増したはず)。
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