[演出:KANEDA/演出協力:菊池宣秀・藤本裕貴・細沼孝之/ナレーション:中村義洋/2020年1月8日発売]
- 「シリーズ監視カメラ カーテンの向こう側」★
- 「一緒に見ていた」★
- 「続 Propagation 前編」★★
- 「煽り運転」★
- 「弟」★
- 「水遊び」★★
- 「続 Propagation 後編」★★
本パートで「Propagation」(★★)が完結。よく言えば本シリーズの王道といえる展開、悪くいえば凡庸な内容だ。登場人物が生命の危機にさらされる場面もあり、いくらでも怖く仕上げることができそうなのだが(ふつうの状況が突然、阿鼻叫喚の地獄絵図に変わるなど)、あっさりした表現になってしまっている。ドキュメンタリー・タッチの淡々とした語り口が裏目に出てしまったようだ。
本作では、『83』に登場した胡散臭い研究団体が再登場。ほかの人は一笑に付すような存在ながら、当サイトはなぜか興味をひかれた。役割としては、他の心霊シリーズでいうところの“霊能力者”と同じなのだが、本シリーズは初期の例外を除いて、“霊能力者”が出てこないのが特徴。そこに本シリーズの矜持が見てとれる。この怪しい団体は“霊能力者”の代わりというわけだ。
“霊能力者”なり、この団体なりは、制作陣のご都合主義をうまくごまかす役割を果たす。「この人は真実を語っていますよ」というメッセージを観る者に伝えているわけだ。前回はそれがうまく機能していなかったが、今回は焦点をしぼり、一点突破をめざしたことが功を奏している。話を聞きながら「ほんとかよ」「口から出まかせだ」とは思うのだが、それなりに不気味さを演出することに貢献していたように思う。
本パートに収録されたそのほかの作品は、やはり怪奇現象として手垢がついたものばかり。かりに“ホンモノ”だったとしても、本シリーズが扱うべき案件ではない。観る者が決めることではないとも思うが、それならそれで、シリーズの視聴をやめてしまうまでだ。
今後の期待もこめて厳しくレビューしていきたい。
「シリーズ監視カメラ カーテンの向こう側」(★)は、自室に起こる怪現象をとらえるために監視用カメラを設置する。ふだん寝起きしている場所でこのような現象が起こるのは、投稿者の立場になれば相当の恐怖だが、やはり既視感があふれる内容なのがいただけない。また、「Propagation」の投稿映像となんとなく似ているのもマイナスに作用してしまっている(他のパートに収録されていたら、もっと評価は上がるかもしれない)。
「一緒に見ていた」(★)は、川で発生したクラゲの大群を撮影していると、奇妙な現象が記録される。なかなか興味深い映像で、過去作に似たものがないのは評価したい。ただ、あまり怖くないのが難点。
「煽り運転」(★)は、恋人たちがドライブしているときに遭遇した恐怖をおさめた映像。「煽り運転だと思っていたら、じつは……」といった怪談がありそうで、本作もそういう展開になるのかと思っていたら、「煽り運転」はまさしく「煽り運転」なのだった。核心となる現象は「煽り運転」とは無関係で、なおかつ内容も観る者の予想を上回るものではない。緊迫感はあるのだが、それは怪現象によるものではないので、どうしても評価は辛くなる。もちろん、制作陣は「煽り運転」と怪現象に関連があると言いたいのだろうが、作中の表現ではただの憶測にすぎず、恐怖へとつながっていない。
「弟」(★)は、投稿者が子どものころに撮影されたホームビデオに、奇妙な現象が映りこむ。過去作を彷彿とさせる内容。その意味で意欲作なのだが、初見でわかりづらいのが良くない。こういうのはパッと見でわからなければダメなのでは? ナレーションで恐怖を煽るが、やはりこじつけとしか思えない。
「水遊び」(★★)は、家族で海水浴を楽しむ様子をおさめた映像に、あの世のモノとおぼしき存在が現われる。本作も初見でわかりづらい。異形の造形が不気味なだけに惜しい。それよりも、終始流れている「迷子のアナウンス」が剣呑な雰囲気を醸し出している点が注目される。もしかしたら、この異形と関係あるのだろうか(そう解釈すると、なかなか興味深い内容の一編といえる)。
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