[構成・演出:マキタカズオミ/演出補:江原大介・中村真沙海・久木香里奈/演出協力:菊池宣秀・藤本裕貴/ナレーション:中村義洋/2021年8月6日発売]
- 「僕の家族」★★★
- 「燃やす」★★
- 「邪魔・前篇」★★★
- 「隅女」★★★
- 「さ迷うもの」★★
- 「速度違反」★★
- 「床下」★★
- 「邪魔・後篇」★★★
演出家がマキタカズオミ氏に交代してから、作品のテイストがシリーズ黎明期に回帰している印象がある。その方向性は間違っていないと思う。二番煎じにならず、プラスアルファの要素がどれだけ盛り込まれているかが見どころになるだろう。その意味で『93』は、それなりに健闘しているものの、あと一歩踏み込んでほしかった想いもある。
取材モノの「邪魔」(★★★)(「隅女」[★★★]は「邪魔」に含れる一編)は、よくある怪談や都市伝説を映像化したらこんな感じになる、といった趣。映像化すると、受け手の想像する余地がなくなり、怖さが半減するものだが、本作はそこそこ不気味に仕上がっている。記念すべきシリーズ第1作目のオマージュのようにも思える点にも注目したい。
「僕の家族」(★★★)は、投稿者が幼少のころに撮影された映像に不気味な存在が映り込んでいた。現われるモノがなかなか不気味でよいが、「なにか映っているのはたしかだが、なんだからわからない」という部分もあり、そこが惜しい。
「燃やす」(★★)は、キャンプで焚き火をしているとき、不可思議な現象に遭遇する。“小道具”の雰囲気がよく、要となる怪現象も悪くない。ただ、ナレーションで怪異の背景が過剰に説明され、興を削いでしまっている。受け手の好みにもよるが、ここは理屈をつけず、想像の余地を残しておいたほうがよかったのでは?
「さ迷うもの」(★★)は、友人と夜の公園を散歩していると、奇妙な映像を撮影してしまう。闇に包まれた公園の雰囲気、友人が連れているワンコの挙動、どこからか聞こえる動物のものとおぼしき泣き声と、恐怖のお膳立てがしっかりできているのに、肝心の異形が「お膳立て」に負けてしまっている。これなら異形が出現しないほうが、むしろ怖かったのでは?
「速度違反」(★★)は、ロードバイクに乗りながらヘルメットに取り付けたカメラで撮影していると、信じがたい出来事が起こる。「怖い」というより「びっくり」する類いの映像。“一発芸”みたいなものだが、ひとつぐらいこういう作品が混ざっていてもよい気はする。
「床下」(★★)は、古民家の床下の状況を調べるためカメラを入れて撮影してみると、奇妙なモノが映り込んでいた。まさしく本シリーズの初期にあったテイスト。初期の作品にありがちな〈異形像微動〉の問題があり、どうしてもニセモノらしさが漂ってしまう。問題を帳消しにするような工夫があればよかったのだが。
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